教授からのメッセージ MESSAGE

現在、感染症の広がりは私たちの日常生活を一変させるほどの脅威となっています。病原体の研究は、診断法・治療法の開発や、ワクチンの開発に直結するものですから、とても大事です。COVID-19の世界的な流行は病原体の研究の重要性を再認識させる出来事であり、大きな被害がでる前から継続して地道に研究を続ける必要性があるんだなと教えてくれました。一口に病原体と言ってもウイルス・細菌・寄生虫と全く異なる生物が含まれます。大阪大学・微生物病研究所は古くから(1934年!)からこれらの病原体を相手に研究を行なっており、日本の感染症研究のメッカとして今もトップを走っています。

私たちの研究室は微生物病研究所の中で、寄生虫を対象として研究しているグループです。2020年6月に新しい研究チームとしてスタートしました。みなさんの中には「寄生虫はもう大丈夫でしょ?」と思う方もいるかもしれませんが、世界的に見ると未だ数億人規模で患者がいる巨大な感染症です。私たちは寄生虫疾患の中で最大級の「マラリア」を対象として研究をしています(詳しいことは研究内容をご覧ください)。特にマラリアを引き起こすマラリア原虫を対象に最先端の技術(次世代シークエンサー解析・CRISPR/Cas9 system)などを使いこなしながら、基礎生物学的なアプローチで研究を進めています。病原体の研究ですから、そこには医学的な要素が多く含まれます。一方で病原体も生物ですので、生物学的な要素や視点も研究ではとても大事になります。私たちは医学ー基礎生物学を行き来しながら、マラリアの対策に貢献する成果を出すことを目標にしています。

大学院進学を希望されている方で、感染症には興味があるけど、これまでやったことがないからなぁとか、理学部・農学部・工学部出身だから研究をやっていけるか心配だなぁと考えている方は是非、一度見学にいらしてください。私自身も農学部出身ですし、スタッフの方は理学部出身ですから、みなさんが感じていらっしゃることはわかりますし、現場を見ることで自信も湧いてくると思います。むしろ、私たちのチームでは多様な考え方を持つことを重視しているので、大歓迎です(医学部の方も大歓迎です!)。研究者として大事なことは目標を持って、それに向かっていくことです。私たちと一緒に大きな目標:マラリア原虫を理解することを目指していきましょう。

2020年9月

大阪大学・微生物病研究所
分子原虫学分野

岩永史朗

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